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記事2026年8月18日

AIが書いた文章、8月から見えない印が入っている。実務3ルール

2026年8月、EUで機械可読なマーキングが義務化され、Claudeは生成テキストに不可視の透かしを入れ始めた。印は3層あって消え方が全部違う。提出物と素材に1行置くだけの実務ルールをまとめた。

その文章、コピペしても印は消えない

AIに下書きを書かせて、そのままドキュメントに貼って提出した。先週もやりました、という人は多いと思います。

2026年8月11日から、その文章には目に見えない印が入っている可能性があります。しかも、コピー&ペーストでは消えません。

Anthropicは8月11日、Claudeが生成したテキストに不可視の電子透かしを埋め込むと発表しました(ITmedia・8月12日報道)。対象はEU域内だけでなく、日本を含む全世界のプロダクトです。画像などのファイルには、C2PAという規格に沿った署名付きのメタデータが付きます。

先に結論を書きます。この話は「AIを使ったのがバレるかどうか」の話ではありません。「あとから出所を聞かれたときに、自分で説明できる状態にしてあるか」の話です。今日はそこを、8月に実際に起きた3つの出来事と、明日から使える3つのルールに分けて書きます。

8月に起きた3つのこと

日付で押さえます。

① 8月2日 — EUのAI法で「機械が読める印」が義務になった

EU AI Act の Article 50(透明性義務)が2026年8月2日から適用開始になりました。生成AIの提供者は、出力した音声・画像・動画・テキストを機械可読な形式でマーキングし、人工的に生成・加工されたものだと検出できるようにする義務を負います。

② 8月11日 — Claudeのテキストに不可視の透かし

上に書いたAnthropicの発表です。ポイントは、これがEU向けの限定対応ではなくグローバル適用であること。「日本にいるから関係ない」が成り立ちません。

③ 8月15日 — Googleは逆に「見える透かし」を消せるようにした

Googleは、AI生成物に表示していた可視の透かしをオフにできる変更を入れました。ただし不可視の透かし(SynthID)とC2PA情報は維持されます(マイナビニュース・8月15日報道)。

3つ並べると方向が見えます。見える表示は減り、見えない印は増えている。画面を見ただけではAI生成かどうかがますます分からなくなり、その代わり機械には分かる状態になっていく。

印は1種類じゃない。3層あって、消え方が全部違う

ここが実務でいちばん誤解されている所です。「AIの透かし」と一括りにされますが、中身は3層に分かれていて、どこで消えるかが全然違います。

図解①:AI生成物についている印の3層

┌ 第1層 見えるラベル(画面上の「AI生成」表示・隅のロゴ)
│  → トリミング・スクショ・コピペで簡単に消える
│
├ 第2層 メタデータ(C2PA=いつ何で作ったかの署名付き来歴)
│  → 別形式で保存し直す/SNSにアップすると落ちることが多い
│
└ 第3層 本体に埋め込まれた透かし(SynthID系・テキスト透かし)
   → コピペしても消えない。大幅な書き換え・翻訳で薄れる

 消えにくさ  第3層 > 第2層 > 第1層
 目に見える度 第1層 > 第2層 > 第3層(第3層は誰にも見えない)

「透かしをオフにした」と聞くと全部消えた気がしますが、消えたのは第1層だけ、ということが起こります。8月15日のGoogleの変更がまさにそれです。

「バレる/バレない」で考えると、まず判断を誤る

理由は2つあります。

1つ目。第3層は残りますが、Anthropic自身が「透かしの検出はClaudeで処理された可能性を示すに留まり、完全な来歴を証明するものではない」と説明しています。検出されても出るのは「Claudeを通った疑い」までで、断定はされません。

2つ目。第2層は簡単に落ちます。SNSに1回アップしただけでメタデータが剥がれることは珍しくない。つまり「メタデータが無い=AIじゃない」も成り立たない。印がある側にもない側にも、証明力は無いということです。

ここは、8月13日に書いた「AI検出ツールの正解率」の話とは別物です。あれは文体から後付けで推定するツールの話でした。今回のは提供元が生成の瞬間に埋め込む印で、性質がまったく違います。混ぜて考えると「じゃあ結局バレるの?」という答えの出ない問いに戻ってしまいます。

だから実務の問いはこう変わります。

【従来】AIで作ったことがバレないか
 → 相手の検出精度しだい。こちらには何もできない。

【これから】出所を聞かれた時に説明できるか
 → 自分の記録しだい。今日から用意できる。

自分でコントロールできる方に問いを寄せる。これが今回いちばん言いたいことです。

ルール1:提出物に「1行の申告」を先に置く

いちばん効くのは、聞かれる前に言っておくことです。後から指摘されて釈明するより、最初に1行あるだけで手間が桁違いに小さくなります。

コピペで使えるように3パターン用意しました。〇〇にツール名、△△に自分や担当者名を入れてください。

【全面的にAIで下書きした場合】
本資料は生成AI(〇〇)で下書きを作成し、△△が全文を確認・修正しています。数値と固有名詞は一次情報で照合済みです。

【一部だけAIを使った場合】
本資料のうち「□□」の章は生成AI(〇〇)で構成案を作成し、本文は△△が執筆しました。図表は自作です。

【文章の校正だけに使った場合】
本資料は△△が執筆し、誤字脱字と表記ゆれの確認にのみ生成AI(〇〇)を使用しています。

ポイントは、「使った/使わない」ではなく「どこまで人が確認したか」を書くことです。相手が本当に知りたいのは、AIを使ったかどうかではなく、この数字を信用していいのかだからです。「AI使用」とだけ書くと、かえって全部が疑わしく見えます。

ルール2:素材ごとに「出所ログ」を1行残す

図表・画像・引用データは、後から「これどこから持ってきた?」と聞かれる確率がいちばん高い所です。ファイルの横に1行あるだけで、対応時間が変わります。

【書式】
素材名 / 作成日 / 生成ツールまたは出典 / 加工の有無 / 確認者

【記入例】
売上推移グラフ / 2026-08-18 / 自作(表計算) / なし / 自分
見出しイメージ画像 / 2026-08-18 / 生成AI(〇〇) / トリミングのみ / 自分
比較表の元数値 / 2026-08-17 / 総務省の公開統計(2026年6月分) / 単位を万に変換 / 自分

図解②:出所ログの有無で何が変わるか

        「この画像どこの?」と聞かれた瞬間

【ログなし】→ 履歴をさかのぼる → 生成元が特定できない
      → 安全側に倒して作り直し … 半日
【ログあり】→ 該当の1行を見せる → 終わり … 1分

私は毎日noteを1本書いて見出し画像も作っていますが、この1行が無いと1週間で分からなくなります。実際、6月に作ったサムネイルの生成元をたどれなくなって作り直した回がありました。それ以来、素材フォルダに _sources.txt を1枚置くだけにしています。凝った管理ツールは要りません。テキスト1枚で足ります。

ルール3:印を消す目的の加工はしない

一応書いておきます。透かしを剥がすために翻訳を往復させる、別のAIに通し直して書き換える、といった加工はやめたほうがいいです。理由は3つあります。

EU AI法は域外適用です。日本にいる個人でも、EU向けに作品やサービスを出すなら対象になり得ます。「国内だけのつもり」がネットでは通りにくいのは、これまでの規制と同じです。

各社の利用規約に検出回避を禁じる条項が入っていく流れも、すでに始まっています。透かしの導入とセットで整備されるので、いま大丈夫でも来月には違反になっている、が起こります。

そして何より、労力に見合いません。ルール1の1行を書けば10秒で終わり、しかも信用は減るどころか増えます。隠す方にコストをかけるのは、単純に損な取引です。

まとめ:3層を知って、1行を置く

8月2日にEUで機械可読なマーキングが義務化され、8月11日にClaudeが生成テキストへ不可視の透かしを導入し、8月15日にGoogleは可視の透かしをオフ可能にしました。方向は一つで、見える表示は減り、見えない印は増えています。

印は3層です。見えるラベルは簡単に消え、メタデータはSNSで落ち、本体の透かしはコピペでは消えない。この違いを知らないと、「オフにしたから消えた」「メタデータが無いからAIじゃない」と、両方向に読み違えます。

やることは2つだけです。提出物の冒頭か末尾に、確認範囲を書いた1行を置く。素材には出所を1行残す。それだけで、聞かれた時の対応が半日から1分になります。

先週AIに書かせたあの文章、出所を聞かれたら答えられますか。役に立ったら♡やブックマークをしてもらえると励みになります。

この記事は note にも掲載しています(初出: note版 2026-08-18)。