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記事2026年8月5日

AIは前回を覚えていない。手順書は自分で書かずに作る3手順

AIに毎回同じ説明を打ち直していませんか。手順書を机の上で書くと必ず抜けます。1回だけ実況しながら作業して、その実況をAIに整形させる3手順と、コピペで使える指示テンプレをまとめました。

毎回おなじ説明を、ゼロから打ち直していませんか。

「うちの表はこういう並びで」「前と同じトーンで」「あ、そこは触らないで」。先週も先月も、まったく同じことを書いた気がする。それでもまた最初から書くのは、AIが前回を覚えていないからです。

そして厄介なのは、この問題が「説明が上手くなる」では解決しないことです。うまく説明できるようになるほど、その長い説明を毎回打ち直すことになる。

「説明が上手くなる」は解決にならない

チャット型のAIは、原則としてその会話の中しか見ていません。新しいスレッドを開いた瞬間、あなたの仕事のやり方は完全にリセットされます。記憶機能を持つサービスもあり、ChatGPTのメモリのように「覚えておいて」と伝えれば残せるものもあります。ただし向いているのは好みや制約のような変わりにくい情報で、「今日の作業手順」のように毎回更新が入る段取りを丸ごと預ける用途には向きません。

だから毎回の説明は「なくす」のではなく「使い回す」しかない。ここまでは、たぶん多くの人が薄々わかっています。問題はその先です。

使い回すために手順書を書こうとして、いざ書き始めると、驚くほど短い3行で終わってしまう。「素材を集める」「原稿を書く」「投稿する」。書いた本人が読んでも、これでは何も再現できません。そして次の日、また同じ説明をチャットに打ち込むことになります。

Microsoftが8月4日に出した答えは「書かせない」だった

ここで面白いニュースが1本ありました。2026年8月4日、Microsoftが「Skill Recorder」というデスクトップアプリを公開したと報じられています(ITmedia AI+ / 窓の杜)。GitHub上でMITライセンスで配布されており、商用利用もできます。

やることは単純です。パソコンの画面操作を、音声で説明しながら録画する。 すると GitHub Copilot CLI がその録画を解析し、作業全体の意図と、順序立てられたステップのリストに再構成する。それをもとに Microsoft Copilot Cowork や Copilot Studio で使えるスキルや自動化が生成され、SKILL.md というただのMarkdownファイルとしても出力できる、というものです。

注目したいのは機能そのものではなく、「手順書は人間に書かせない」と割り切った点です。作業を言葉にする工程を人間から取り上げて、「やって見せる」だけにした。

念のため断っておくと、これは公開されたばかりで、実運用でどれくらい正確に手順を拾えるかの実績データはまだありません。対象も Copilot 系のサービス前提で、主に macOS 向けです。だからここでは「このアプリを入れましょう」という話はしません。借りるのは考え方だけで十分で、それは今日からChatGPTでもClaudeでもできます。

手順書を自分で書くと、いちばん大事な部分が抜ける

なぜ人間が書いた手順書は3行で終わってしまうのか。理由ははっきりしています。人は、自分が意識している工程しか書けないからです。

実際に毎回時間を溶かしているのは、「原稿を書く」のような大きな工程ではありません。その途中にある、

  • 先月のフォルダが空だったときにどこを見るか
  • 数字を入れたとき、出典の日付をどこに控えるか
  • 投稿する前に、何を目視で確認するか

といった分岐と例外です。これらは手が勝手にやっているので、机に向かって思い出そうとすると出てきません。

さらに悪いことに、事後に書く手順書には「うまくいったルート」しか残りません。途中で試してやめた選択肢と、やめた理由が消えるのです。次に同じ場面に来たとき、また同じ回り道をします。

【あとから自分で書いた手順書】
 ① 素材を集める
 ② 原稿を書く
 ③ 投稿する
 → 3行で終わる。毎回つまずく所がどこにも書かれていない

【実況から起こした手順書】
 ① 素材を集める
 │  └ 先月分が無い場合 → 前月フォルダを直接開く
 ② 原稿を書く
 │  └ 数字を入れたら、出典名と日付も同じ行に控える
 ③ 投稿する
 │  └ 投稿前に本文を読み直す(文字が欠けることがある)
 → 分岐と例外が残る。ここが実際に時間を溶かしていた所

やり方は3手順。1回だけ自分でやって、実況を投げる

画面録画アプリは要りません。やることは3つです。

① その作業を1回だけ、いつも通り自分でやる。ただし実況しながら。

作業しながら、メモ帳に1行ずつ打ちます。「今この画面を開いた」「ここに先週のファイルを貼った」「これは去年の数字だったので使わなかった」。3分の作業なら10行程度で十分です。

コツは1つだけ。「なぜそうしたか」を、思いついた分だけ混ぜること。 手順だけ並べても、分岐は拾えません。「◯◯だったから、こっちにした」の“だったから”が、そのまま次回の判断基準になります。

② その実況を、そのままAIに渡して整形させる。

ここでコピペで使える指示がこれです。

以下は、私が実際に手を動かしながら書き出した作業メモです。
これを、次回そのまま貼れば同じ作業を再現できる「手順書」に整形してください。

【条件】
・私が書いていない工程があっても、勝手に補わないでください。
 足りないと思った箇所は、最後に「確認したいこと」として質問にしてください。
・判断が入る箇所は「◯◯なら A、そうでなければ B」の分岐の形で書いてください。
・一般的なコツやアドバイスは書かないでください。この作業に固有の手順だけにしてください。

【作業メモ】
(ここに実況を貼る)

3つの条件には、それぞれ役割があります。「勝手に補わないで」は、AIが一般論で穴を埋めて“それらしいが自分の作業ではない手順書”になるのを止めるため。「分岐の形で」は、抜けやすい例外を強制的に書かせるため。「一般的なコツは書かないで」は、手順書が読む気を失う長さに膨らむのを防ぐためです。

最後に返ってくる「確認したいこと」が、そのまま自分が無意識にやっていた工程のリストになります。ここがこのやり方のいちばんの収穫です。

③ 次回からはそれを貼る。つまずいた所だけ、1行足す。

手順書は完成させるものではなく、育てるものです。使ってみて引っかかった日に、この一言を添えます。

この手順書で今日つまずいたのは次の1点です。
・(何が起きたか/どう回避したか)
これを該当ステップに1行だけ足した全文を返してください。他の行は変えないでください。

「他の行は変えないで」を入れないと、AIは全体をきれいに書き直してきます。せっかく溜めた例外が、整った文章になって消えます。

1回だけ自分でやる ─→ 実況メモ ─→ AIが手順書に整形
                                     │
       次回はこれを貼るだけ ←─────────┘
               │
    つまずいた ─┴─→ その1行だけ追記 ─→ 手順書が育つ

私の手順書は、失敗のたびに1行ずつ増えた

Play+では、この記事を書いて公開するところまでを毎日の定型作業にしています。その手順書も、最初は「記事を書いて、noteに投稿する」程度のものでした。

いま入っている行のうち、最初の版に無かったものを3つ挙げます。すべて、実際に失敗した日に足したものです。

・「見出しは # ではなく で書く」

最初はMarkdownのつもりで書いていたのですが、noteの入力欄に自動で流し込むと # が変換されず、文字のまま本文に残りました。これは「投稿する」の中に隠れていた工程で、机の上では絶対に思い出せません。

・「入力後、本文を読み直して欠字を確認する」

入力の最初の部分でアルファベットが数文字抜け落ちる現象が起きた日があります。以来、公開ボタンを押す前に本文を機械的に読み直す行が入りました。

・「図解はコードブロックで囲む」

罫線で作った図をそのまま貼ったら、行がつながって図が崩れました。囲むだけで直る、と分かるまでに1回失敗しています。

3つとも、やってみるまで存在すら知らなかった工程です。逆に言えば、机の上で考えて書いた完璧な手順書には、この3行は永遠に入りません。

つまずくのはこの3か所

1つめ。手順書が長くなりすぎる。 条件に「一般的なコツは書かないで」を入れても、更新を重ねると膨らみます。目安として、1画面に収まらなくなったら分割してください。工程が多いのではなく、たいてい説明文が増えています。

2つめ。実況が「手順」だけになる。 「Aを開く」「Bを貼る」だけのメモからは、3行の手順書しか生まれません。“だったから”を1つも書けなかった日は、その作業がまだ手順化に向いていないサインです。

3つめ。作って満足して更新しない。 これがいちばん多い失敗です。手順書の価値は、書いた日ではなく、つまずいた日に1行足した回数で決まります。逆に言えば、1週間使って1行も足していないなら、それはもう完成していると考えていい。

まとめ

AIは前回を覚えていません。だから毎回の説明は、うまくなるより先に、外に置くべきものです。

そして手順書は、机の上で自分で書かないほうがいい。1回だけいつも通りやって、その実況をAIに整形させる。 抜けているのは工程ではなく、あなたが無意識に処理している分岐と例外のほうだからです。

次に「また最初から説明してるな」と思った瞬間が、始めどきです。その作業を、今日1回だけ実況しながらやってみてください。

同じ場面、ありませんか。役に立ったら♡やブックマークをどうぞ。


この記事は note にも掲載しています(初出: note版 2026-08-05)。