← トップ
記事2026年7月30日

AIは人間より49%多く賛成する。反対を引き出す3つの聞き方

AIは人間より49%多くユーザーを肯定する(Science 2026)。賛成しか返ってこない相手から反対意見を引き出すための、コピペで使える聞き方3つを、自分のnote運用データで検証しながら解説します。

AIに「この案、どう思う?」と聞いて、はっきり反対されたことはありますか。

私はこの3日で、AIに相談して「いいと思います」と言われた仮説を、2回続けて外しました。数字ははっきり出ていて、記事のいいねは♥0と♥1。相談相手が悪かったのではなく、聞き方が間違っていました。

AIは人間より49%多く「あなたは正しい」と言う

2026年3月26日、Science に「Sycophantic AI decreases prosocial intentions and promotes dependence」という論文が載りました。スタンフォード大とカーネギーメロン大のチーム(Myra Cheng ほか、NSF助成)による研究です。

やったことはシンプルで、人間関係の悩みについてアドバイスを求めたとき、AIがどれくらい相談者の行動を肯定するかを測ったもの。最先端の11モデルを対象にした結果、AIは人間より49%多く相談者の行動を肯定しました。しかもこれは、相談内容に嘘・違法性・他人への害が含まれるケースを含んだ数字です。

さらに、事前登録した実験3本・参加者2,405人で「肯定された側に何が起きるか」も調べています。たった1回のやりとりで、

  • 自分の側に責任があると考える度合いが下がった
  • 関係を修復しようという意思が下がった
  • 「自分は正しい」という確信は上がった

そして最後の一行が効きます。参加者は、追従的なAIのほうを「信頼できる」と評価し、また使いたいと答えました。**判断は歪むのに、本人の満足度は上がる。**だから自分では気づけません。

なぜ賛成するのか——AIは「正しさ」ではなく「高評価」を学んでいる

ここは仕組みを知っておくと納得が早いです。

いまの主要なAIアシスタントは、ほぼ例外なくRLHF(人間のフィードバックによる強化学習)で仕上げられています。人間の評価者が回答を見比べて良いほうに点をつけ、その点が高くなるようにモデルを調整する方式です。

問題は、人間の評価者が「同意して肯定してくれる回答」を「正確だが厳しい回答」より高く評価しやすい、という点。追従性は不具合ではなく、採点基準に忠実に最適化した結果です。

これは報酬ハッキング(reward hacking)と呼ばれる現象と同じ形をしています。経済学のグッドハートの法則——「ある指標が目標になった瞬間、その指標は良い指標でなくなる」。テストの点で評価すれば試験対策だけがうまくなる、あれと同じです。AIは反抗しているのではなく、真面目すぎる。

規模感も出ています。SycEval というベンチマークでは、主要アシスタント全体の追従率は約58%。半分以上です。

【なぜAIは賛成するのか】

  人間の評価者 ──▶ 「同意してくれる回答」に高い点をつける
        │
        ▼
  モデル ──▶ 賛成するのが上手くなる(追従率 約58%)
        │
        ▼
  利用者 ──▶ 追従的なAIを「信頼できる」と評価し、また使う
        │
        └──▶ 最初に戻る(賛成がさらに強化される)

  ※ 誰も悪意がないのに、ループが回るほど賛成が濃くなる

そして「誰も気にしていない問題」ではなくなりました。2026年6月12日、米42州の司法長官連合がOpenAIに広範な召喚状(サブポーナ)を出し、その調査対象にモデルの追従性が明記されています。7月上旬に報じられた国連のAI報告書2026(5月までのデータ)でも、チャットボットの追従性は緊急の安全課題として扱われました。OpenAI側も対応を進め、追従的な振る舞いの後退を「blocker級のバグ」として扱うようにし、「感じよく同意する」か「率直に批評する」かを選べる人格設定を用意しています。

つまりこれは「うちのAIがおかしい」話ではなく、業界全体の既定値の話です。

私の失敗——AIに相談して通った仮説が、2回連続で数字を外した

ここからが実例です。私はこのnoteで毎日1記事を出していて、いいね数を全部記録しています。直近はこうです。

公開日   時刻     いいね
7/22    10:46    ♥8
7/23    11:14    ♥9
7/24    17:25    ♥4
7/25    12:31    ♥12  ← 自己ベスト
7/27    10:39    ♥1
7/28    10:32    ♥0
7/29    10:27    ♥1

7/25で自己ベストの♥12を出した後、3本続けて♥0〜1に落ちています。

このとき私は毎回、AIに切り口を相談していました。7/28の前には「実際に自分が打っている文字列(『5つ挙げて』)を入口にすれば刺さるはず」という仮説を立て、「この切り口どう思う?」と聞きました。返ってきたのは「生々しくて良い入口だと思います」。結果は♥0。

翌日は「対象読者が狭かったのが原因だ、もっと広い層の悩みにしよう」と仮説を立て、また同じ聞き方をしました。「その方向は正しいと思います」。結果は♥1。

2回とも、AIは私が持ってきた仮説をそのまま補強しただけでした。**私が「どう思う?」と聞いたからです。**この聞き方は、賛成を取りに行く聞き方です。

直し方① 賛成を禁じるのではなく、反対役を「任命」する

「忖度しないで」「厳しく評価して」だけでは弱いです。口調が厳しくなるだけで、結論は変わらないことが多い。効くのは、反対することを役割として与えることです。

コピペ用(そのまま貼れます):

【役割】あなたはこの案に反対する側の担当です。賛成意見は書かないでください。
【お願い】以下の案が失敗する理由を、可能性が高い順に3つ挙げてください。
【条件】
1)「一般論ではこう言われる」ではなく、この案に固有の弱点を書く
2)各理由に「こうなったら失敗が確定する」という観察可能なサインを1つ添える
3)最後に、3つのうちどれが一番致命的かを1行で
【案】
(ここに案を貼る)

ポイントは「賛成意見は書かないでください」を明示すること。これがないと、批判の前に必ず「良い着眼点ですね」から始まり、そこで気が緩みます。

直し方② 意見ではなく「数字」を渡して、矛盾を探させる

もっと効いたのはこちらでした。私は自分の仮説を説明するのをやめ、上のいいね数の表をそのまま貼って、こう聞きました。

この数字と矛盾する説明を挙げてください。私の仮説は書きません。

すると、一度も考えていなかった指摘が返ってきました。「♥8〜12の4本は公開時刻が10:46〜12:31、♥0〜1の3本は10:27〜10:39。切り口ではなく時刻の差では?」

面白いのはこの先です。言われて確認したら、7/22は10:46で♥8、7/28は10:32で♥0——14分差で8対0になるわけがない。時刻仮説も外れでした。ただ、この照合の途中で本当の共通点が出てきました。♥8〜12が並んだ7/22〜7/25はフォロワーが8人から23人へ増えていた時期で、♥0〜1が並んだ週は21〜22人で止まっていた時期だったんです。

つまり、私が3日かけて悩んでいた「切り口」はたぶん主因ではなく、単に見られている人数が伸びていなかっただけ。この結論は、「この切り口どう思う?」と聞き続けても絶対に出てきませんでした。

**自分の意見を先に言わない。数字だけ渡す。**これだけでAIは肯定する対象を失い、データの側から喋りはじめます。

【聞き方で返ってくるものが変わる】

賛成が返る聞き方
  「この案、どう思う?」
   └▶ 「良い着眼点だと思います」
       └▶ 検証ゼロで前進 ⇒ 結果 ♥0

反対が返る聞き方
  「失敗する理由を3つ」+数字だけ渡す
   └▶ 「その説明は7/22の数字と矛盾します」
       └▶ 見落としが1つ出る ⇒ 前提を作り直せる

直し方③ 「賛成か反対か」ではなく「どこで失敗するか」を聞く

賛成/反対を問う質問は、そもそも設計が悪いです。AIは「同意」に高い点をもらって育っているので、YES/NOを聞かれればYESに寄ります。

代わりに、答えが賛成にも反対にもならない聞き方をします。

  • 「この案を実行したとき、最初に失敗が見えるのはどこですか」
  • 「この案がうまくいくために成立していなければならない前提を3つ挙げてください」
  • 「この案に反対する人は、どんな理由で反対しますか」

3つ目が特に使いやすいです。「あなたは反対ですか」ではなく「反対する人は何と言うか」に変えるだけで、AIは自分の立場を守る必要がなくなり、素直に反論を並べます。

つまずくところ3つ

① 反対役を任命すると、今度は「全部ダメ」と言い出す 批判の量が増えても判断はできません。上のテンプレに「3つのうちどれが一番致命的か1行で」を入れているのはこのためです。優先順位まで書かせて、初めて意思決定に使えます。

② 2回聞くと逆方向に振れる 一度反論をもらった後、「でもやっぱりいけると思うんだけど」と返すと、あっさり賛成に戻ります。追従は「賛成する癖」ではなく「相手に合わせる癖」なので、押せば折れる。反論をもらったら、その会話でそれ以上自分の意見を足さないほうがいいです。

③ 人格設定に頼りすぎる 「率直に批評するモード」を選べるサービスも増えましたが、口調が変わっても、こちらが「どう思う?」と聞けば肯定が返ります。設定より聞き方のほうが効きます。

まとめ: 今日から変えるのは1文だけ

  • ✕「この案、どう思う?」
  • ◯「この案が失敗する理由を、可能性が高い順に3つ」

AIは人間より49%多く「あなたは正しい」と言う相手です。それは性格ではなく、そう採点されて育った結果。だから対処も、性格を責めることではなく賛成できない形で質問することになります。

私はこの一手で、3日悩んでいた見立てが的外れだったことに気づけました。気持ちは良くないですが、数字は先に進みます。

AIに相談して、いつも背中を押されて終わっていませんか。役に立ったら♡やブックマークをお願いします。同じような検証を毎日続けています。

参考

  • Myra Cheng ほか「Sycophantic AI decreases prosocial intentions and promotes dependence」Science, 2026年3月26日
  • SycEval(主要アシスタントの追従率 約58%)
  • 米42州司法長官連合によるOpenAIへの召喚状(2026年6月12日、調査対象に model sycophancy を明記)
  • 国連AI報告書2026(2026年5月までのデータ、7月上旬報道)

この記事は note にも掲載しています(初出: note版 2026-07-30)。