継ぎ足しの壺
世界にひとつの壺を通りすがりの全員で継ぎ足していく共有の出汁。一杯すくって飲む→一杯注ぐのセットだけで動き、注いだ一滴は消えないまま後から来た人の手で薄まり続ける。
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「創業以来つぎ足しております」という秘伝のタレに、創業当時のタレはどれくらい残っているのか。計算するとあっけなくて、少しずつ使って少しずつ足す限り、古いものは指数関数的に薄まり、何十年も経てば実質ゼロになります。この計算自体は有名な話ですが、記事で読むのと、自分が注いだ一滴が見知らぬ他人の手で薄まっていくのを眺めるのとでは別の体験になるはずだと思って作りました。継ぎ足しの壺は、世界にひとつしかない出汁の壺を、通りすがりの全員で継ぎ足していく共有サービスです。
こんなときに使う
- 秘伝のタレに創業時の味は残るのか、という話を数字で見てみたいとき
- 自分の痕跡が残るのか消えるのか、はっきりしないまま置いておける場所がほしいとき
- 知らない誰かと同じひとつのものを共有している感じを、短時間で味わいたいとき
- その瞬間にしか存在しない配合の一杯を飲んで、記録として持ち帰りたいとき
使い方
- 開くと、いまの壺の銘(「濃口・旨香の出汁」など)と6軸の味、材料の内訳が出ます。
- 注ぐ材料を24種からひとつ選びます。かつお節・昆布・醤油・みりん・梅干し・柚子・山椒・ごま油などです。
- 「注ぐ」を押すと、まずいまの壺から一杯すくって飲み、続けて同じ量だけ選んだ材料が注がれます。すくうことと注ぐことは分けられません。
- あなたが飲んだ一杯の銘と味、合いそうな料理が出ます。この配合はもう二度と作れません。
- 「あなたの一滴」に自分のぶんが記録され、開くたびに残存率が下がっていくのが見えます。
仕様と機能
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 壺の容量 | 1000ml(増減なし) |
| 一杯の量 | 20ml(すくう量=注ぐ量) |
| 一回の継ぎ足しで残る割合 | 98% |
| 材料 | 24種(甘・塩・酸・苦・旨・香の6軸を持つ) |
| はじめの中身 | 創業のかつお出汁 1000ml |
| 連投の間隔 | 20秒 |
| 24時間の上限 | 30杯 |
| 呼び名 | 10文字まで(空欄なら名無し) |
| 飲み帳 | 直近30件 |
壺の中身そのものは保存していません。保存するのは注がれた材料の列だけで、開くたびに畳み込んで組み立て直します。通し番号 n の一滴は、総継ぎ足し数を N として 20×0.98^(N−n) ml、創業の出汁は 1000×0.98^N ml。和は常にちょうど1000mlになるので、同じ手の列からは必ず同じ壺と同じ銘が組み上がります。畳み込むのは直近1200手までで、それより古い一滴は残量が10のマイナス9乗ml を下回るため、残差は創業の出汁に寄せています。
一手は seq を主キーに直列化しています。注ぐときは自分が読んだ時点の次の番号を取りにいくので、その間に誰かが割り込んでいれば主キー衝突で弾かれ、「自分が飲んだ壺の続き」にしか注げません。飲んだ一杯の味はその時点の6軸を丸めて手と一緒に保存するので、飲み帳を見返しても当時の銘が残ります。
作るときに決めたこと
一杯を20mlにしたのは、体感の速さを決める数字だからです。98%残るということは、一滴が半分になるのに約34回、0.1%を切るのに約149回。1杯めの一滴は100回めの継ぎ足しでもまだ0.27%残っています。これが一杯100mlだと20回ほどで消えて「薄まる」より「流される」感じになり、一杯10mlだと何百回注いでも変化が見えません。消えないのに減っていく手ざわりが出るのがこのあたりでした。
すくうことと注ぐことを分けなかったのも意図的です。注ぐだけなら壺は増える一方で薄まる理由がなく、すくうだけなら空になります。両方を必ずセットにすると、量が変わらないまま中身だけが入れ替わり続ける、老舗の鍋とまったく同じ振る舞いになります。ついでに、すくった一杯はその瞬間の配合そのものなので、飲んだ人が世界にひとりだけ、という副産物も生まれました。
味の6軸の数値は成分分析ではなく、この壺の中だけで一貫している設計値です。実際の塩分濃度を当てにいくより、24種を並べたときに配合の違いが銘に出ることを優先しました。
注意点
- 壺は世界にひとつだけで、リセットも巻き戻しもありません。注いだ一滴は取り消せません。
- 「あなたの一滴」はこの端末に保存しています。別の端末や履歴を消したあとでは引き継げません。
- 創業のかつお出汁は足すことができず、減る一方です。いずれ0%と表示される日が来ます。
- 認証がないので、連投間隔と1日の上限、簡易のレート制限で濫用を抑えています。